よく聞かれること。
美容師をやっていて、「よくお客様に質問されることBEST 3」(自分調べ)というのがありまして、それは何かというと、
□(鏡越しに)「左利きでしたっけ?」(右利きだけど鏡で反転している)
□「自分の髪は自分で切るんですか?」(自分で切る人もいるけど僕は切ってもらう」
そして最後は…
□「似合わないと思う髪型をオーダーされたらどうするんですか?」
です。
この3つの質問は多分美容師の皆さんはかなり聞かれるんじゃないか、と思うんです。そして即答するのがなかなかに難しいのが3番目の質問。
この手の質問にどう答えるかというのは、その美容師さんの仕事のやり方や考え方、というものが多分に影響してくるところ。
では現在、barrette&cream的にはどんなふうに回答しているかというと
「どうしてそのヘアスタイルにしたいと思っているのか、というゲストの気持ちを洞察してそれを編集し、ヘアスタイルにうまく落とし込むことで気分良くいてもらうことこそが美容師の仕事の本質なので、少なくともなりたいイメージがあるというモチベーションを決して否定しないようにしています。」
そんな具合でしょうか。
そもそも、ヘアスタイルを作る、髪の毛を切る、という仕事には当然ある一定のトレーニングが必要ではあるものの、そこまで破茶滅茶に難しい作業というわけではないと常々思っているタイプです。
それから、巷でよく言われる「似合う髪型」「似合わない髪型」というのもだいぶ流動的で不確かな、いわば相対的な概念だと思っているので、あまり当てにしていません。
じゃあ美容師の仕事で一番難しい(それはつまりやりがいのある)ことかというと、
ヘアスタイルを通してゲストの気持ちを高めて毎日気持ちよく過ごしてもらうこと。
だと感じています。
例えばお客さんが何らかの切り抜きなり画像なりを見せてくれたとして、そのビジュアルには、その人の「こうなりたい!」という憧れや理想が詰まっているでしょう。
そしてその気持ちこそが、美容室という空間が存在し、美容師という仕事が世の中で成り立っていくために絶対必要なものです。
別にハサミさえあれば誰でも髪なんて(便宜的には)切れるわけですから。
せっかく「こうなりたいな」という美に対する高いモチベーションを持って来店してきてくれているのに、そういう気持ちをこちらが無視して、「似合わないから」という理由でばっさり切り捨てるのは、長期的に見て結局は美容師自身の首をしめることになると思います。
その気持ちがなくなったら商売上がったりですからね。
むしろ、「どうしてそういう雰囲気にしたいと思ったのか」「どうしたらこのテイストをゲストに落とし込めるか」「そうすることによってもたらされるイメージが果たして好きかどうか」
そうしたことを前向きに話し合い、それを踏まえてこちらがうまく編集して、最良の仕方で提供する、というのが美容師の仕事の本質だと思うのです。
例えば洋服が欲しくて、接客レベルの高い店員さんのところで、または洋服に詳しい信頼できる友人と共に買い物に来ている場面をイメージしてみてください。
あなたが新しいスカートを購入したい、と言って、あるスカート1つを持ってきたとします。
それを見た店員さんやその友達は、「あなたにはスカートが似合わないから、こっちのパンツがいい」と言ってきたりするでしょうか。多分そうは言わないでしょう。
おそらく、あなたによりフィットするであろう、最初のものと似ていながらも少し違う別のスカートを提案してくれるでしょう。そして、先程のものとの違いや、このアイテムがあなたをより魅力的に見せてくれる理由などを教えてくれるでしょう。
詳しい人ほど、僅かなディティールの違いが大きな差になるということを知っているものです。
そのようにして、「スカートが欲しい」という本人のモチベーションを下げずに満足する買い物ができるよう助けてくれると思います。
美容室での仕事も似たところがあると思います。まして、美容室での仕事は洋服で言ったらオートクチュール、つまりフルオーダーメイドの仕事に近いものですから、より個人にカスタマイズしていく必要があるでしょうし、そうすることで作られる僅かな違いによってさまざまなイメージを生み出せるでしょう。
それを実現していけるような、そつなき技術とコミュニケーション、そして提案力を今後も身に着けていきたいものです。
それによりゲストの方々が、「あそこに行くとなんだか分からないけど感じよくやってくれて、その後も気分良く過ごせる」と感じていただけるようでしたら、それに勝る喜びはありません。
高まっていくのみ。ではまた。