素材と向き合う、ということ。

「ボリュームが出ない」とか

「多毛で広がっちゃって」とか

「直毛すぎて動かない」とか

「クセではねる」とか…

お客様からの相談を受けるたびに

「自分の持つ素材と向き合う」って何だろう?

…と考えます。

素材と向き合う、それは

髪だけではありません。

自分の顔かたち、体型、持ってる才能や好みなど、

正に十人十色、百人百色で

持っているものはみんな違います。

自分の努力で

変えられるものもたくさんありますが

変えられないものもたくさんあります。

では

髪はどうかというと

髪の質、素材自体を変えるというのはまず不可能に近い分野ではないかと思うのです。

だけれども一時的には(そう、一時的には)

美容院で行う何らかの技術で悩みを解決できてしまったりするもの。

もちろんそれ自体は美容院やお客様にとって一般的になんら悪いことではありません。

しかし、あまりにも素材を否定するところからヘアスタイルを決めたり

素材の持つ特徴から離れた形ばかりを追い求めるのは

身体的、精神的、経済的、そして人間的になんだか違和感を感じてしまうのです。

(あくまで個人的には、です)

言い換えれば、

「美容院への依存度が高くなるような美の形を追い求めない」とでも表現できるかもしれません。

素材を否定する、悩みを解決することばかりに目を向けるなら

もしかすると

自分に自信がなくなるかもしれません。

頻繁に化学的な処理を髪に受け続けなければいけません。

他人が羨ましく思えるかもしれません。

美しくなるためには沢山のお金が必要、という錯覚に陥り

そして何より、美容院がとっても儲かる仕組みが誕生します。

果たしてそれは「本当に美しい」のか。

「美」の価値観には色々ありますので、それらを全て否定することは良くないことですが、

少なくとも個人的には「伸び伸びとした人間らしい美しさ」に欠けているような気がしてなりません。

素材を変えられなくても、素材に対する見方は変えられます。

ボリュームが出ないのはサラサラとした毛の持ち主。

多毛は若々しさ。

直毛にはオリエンタルな美しさがあり

クセ毛は髪の動きに変換できる可能性を持っています。

それはちょうど

旬の食材にそれぞれ適した調理方法があるのに似ています。

素材を美味しく味わうために、手を入れすぎるのは良くない。

髪も同じです。

素材を生かした色んなヘアスタイルが増えれば、世の中に存在する美しさにもさらに多様性が生まれ、なんだか素敵です。

いくぶん究極的な話になりましたが

barrette&creamでは

「何をするか」よりも「何をしないか」

「ゲストの素材の良さをどう生かすか」

ということを共に考える、そういう美容院でありたいと思っています。

2019.02.14 | Posted in columnComments Closed 

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