例えば、季節の採れたて野菜でこしらえた気のきいた一皿。誰もがその滋味深い素材の醍醐味に感動を覚えるように、髪もできる限り素材や個性を大切にしながら手を入れていきたい。 自分では短所だと思えるところも、より素敵になるためのもとと捉え、好きになってもらえるようにまずは考えます。
大切にしたいのは、ゲストの佇まい、気持ちの移り変わり、鏡の前に座るまでのストーリー、時代の気分、美容師のアイディアやインスピレーション。つまり目には見えない、空気のようなもの。見えないものにきちんと向き合うと、見えてくる形があります。
シンプルであることは、複雑であることよりも難しいときがあります。「何をするか」より「何をしないか」をよく考える。そうやってできあがった、一見なんてことないように見えるものにこそ、上質で洗練された雰囲気が漂うと思っています。
あなたとあなたの衣食住、周囲を取り巻く素敵な人々。髪はそんなくらしの中のほんの一部に過ぎません。 それでも髪が、風になびいたりかきあげられるのを目にしてハッとする。きゅっと結わえるときに心がシャンとする。そんなことがあるたび、髪がくらしにもたらす力が決して少なくないのを感じます。 だからいつでも意味のある形、そして髪とその人とくらし全体のバランス感を大切にします。
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